今日のみ言葉【No.1016】(2015年 4月 6日)
これがその分だからである。
（伝道の書5:18）
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池波正太郎氏の小説『鬼平犯科帳』の主人公、長谷川平蔵は、生い立ちが生い立ちだけに、人情の機微がよくわかり、下情に通じています。
池波氏はある箇所で彼にこうつぶやかせています。
「つまりは、人間（ひと）というものは、生きて行くにもっとも大事なことは……たとえば、今朝の飯のうまさはどうだったとか、今日はひとつ、なんとか暇を見つけて、半刻か一刻を、ぶらりとおのれの好きな場所へ出かけ、好きな食物（もの）でも食べ、ぼんやりと酒など酌みながら……さて、今日の夕餉（ゆうげ）には何を食おうかなどと、そのようなことを考え、夜は一合の寝酒をのんびりとのみ、疲れた躰（からだ）を床に伸ばして、無心にねむりこける。このことにつきるな」
（『鬼平犯科帳』，第7巻「寒月六間堀」）
この世の矛盾を舐めつくし、その上で火付盗賊改方長官の役目を担う平蔵ならではの「庶民の幸福論」です。
人生のはかなさ、空しさが身にこたえる時、案外これが人生を支える考え方なのかもしれません。
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伝道の書第5章では、様々な「空しさ」が繰り返し述べられています。
信仰が儀式だけに終わること。貧しい者と富める者がおり、共に安心できないでいること。世に悪があること…。
そこでこの書の記者はこうまとめています。
「人は一生、暗やみと、悲しみと、多くの悩みと、病と、憤りの中にある。」
（伝道の書5:17）
何と言う虚無的人生観でしょうか。
この世に救いを見いだせない人間の結論です。
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しかし次の18節では一転して、
「見よ、わたしが見たところの善かつ美なる事は、神から賜わった短い一生の間、食い、飲み、かつ日の下で労するすべての労苦によって、楽しみを得る事である。これがその分だからである。」
と、生きることに意味を見出そうとしています。
その中心点は、今日の聖句の
「これがその分だからである。」
（伝道の書5:18）
というところです。
よく、「分をわきまえる」「過分なおもてなしに恐縮いたします」などと言いますが、人間には「その分」があるというのです。
そして「その分」の中で生きる時、
「神は喜びをもって彼の心を満たされる」
（伝道の書5:20）
と約束されています。
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ここで言う「分」とは「自分の位置」「立場」と考えてよいでしょう。
アダムとエバが罪を犯して自分の立場を見失った時、神が最初に語りかけた言葉は、
「あなたはどこにいるのか」
（創世記3:9）
でした。
また、
「ただ少しく人を神よりも低く造って、栄えと誉とをこうむらせ」
（詩篇8:5）
「思うべき限度を越えて思いあがることなく、むしろ、神が各自に分け与えられた信仰の量りにしたがって、慎み深く思うべきである。」
（ローマ12:3）
とあります。
絶対に動かない神を基準として自分の立ち位置を知る時、私達は自分の「分」を知ることができ、喜びに満たされる人生の道が見えてくるのです。
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コンビニコーヒーが大流行の昨今です。
先日入ったコンビニで、私は二人分のお金を支払い、家内の分のコーヒーを入れるために機械のボタンを押しました。
するとビックリ、Ｓサイズのカップに溢れそうなほどコーヒーが注がれてくるではありませんか。
私は間違ってＭサイズの方のボタンを押していたのです。
しかしよく見ると、Ｓサイズの方の「押す」というシールが剥がれていたので、見えなくて無意識に下のＭサイズの「押す」ボタンに触れたのだとわかりました。
その時悪魔のささやきが聞こえました。
「このままフタをかぶせれば誰にもわからないぞ」
「店側のミスだからこのまま行ってしまえ」
罪人の私の心がスーッとそちらに引っ張られて行こうとした瞬間、
「私、50円払ってくるわ」
と差額を払うためにレジに向かう家内の声が聞こえてきました。
神の前での自分の位置を常に意識しているうちの奥様は、自分の「分」というものをちゃんと知っていたのです。
神の前でどうあるか。
これが鍵です。
私は50円で悪魔に魂を奪われるところを妻に救われました。
その後のドライブ中のコーヒーの味は、平安の味でした。
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神の前での自分の位置を確かめ、感謝を見出す一日として参りましょう。
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