今日のみ言葉【No.1529】(2017年 5月15日) 082 「大祭司アンナス」(1)
まずアンナスのところに引き連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパのしゅうとであった。
(ヨハネ18:13)
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「黒幕(くろまく)」とは黒いカーテンのことではありません。
元々は歌舞伎から出た言葉で、舞台裏で黒い幕を操作し、表舞台を進行させる役目の人のことを言います。
そこから転じて、
「物事を裏で操り、決して表に出ない実力者」
「強い影響力を持ち、表の世界を牛耳る人物」
それが「黒幕」という言葉の意味となりました。
このような人々はどの時代にもいました。
イエス様の時代にはアンナスという人物がこの類の人でした。
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アンナスはその年の大祭司カヤパのしゅうとでした。
つまり、イスラエルの宗教体制のトップとされる大祭司カヤパの義理の父であったわけです。
と言うより、前の大祭司であったアンナスが名誉大祭司として一応引退した形を取り、その地位を義理の息子に継がせ、実は陰の実力者として隠然たる勢力を維持していたと言ったほうが良いでしょう。
祭司の上の大祭司とは、
・霊的に優れている
・聖書に精通している
・人格者
というイメージを持ちますが、イエス様の時代の大祭司は全く異なっていました。
イスラエルを支配していたローマ帝国の政策に追従する者がその職にあずかるようにされていたのです。
霊的ではなく俗的な人がその地位につき、権威を振り回していたということです。
そのため、ローマ帝国に取り入ってその職を得るために、贈賄と汚職がつきまとっていました。
特にアンナス一族は陰謀と収賄によって要職についており、神殿祭儀のいけにえの動物や神殿通貨への両替を、神殿の庭で一手に扱うことによって莫大なリベートを懐にしていました。
ですから、神殿内のそのような市が、「アンナス市場」と呼ばれるほどでした。
兵士たちに捕らえられたイエス様が、大祭司カヤパのところではなく、引退して公式には何の力も権威もないはずのアンナスのところへ連れて行かれたのは、このような裏事情があったからなのです。
このような現実の中で私たちは生きているのです。
そして同時に覚えるべきことは、この矛盾した現実のただ中にイエス様は進んで飛び込んできて下さり、私たちと今、共におられるということです。
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私がイスラエル聖地旅行に行った際、一番印象に残ったのはベツレヘムでした。
キリスト生誕の地だからという以上に、そこでの人々の生き様が最大の思い出となっています。
現在のベツレヘムを訪れる時は、決して東方の博士たちや羊飼たちが拝みにやって来たクリスマス降誕劇を思い浮かべてはいけません。
現在はアラブ系の入植者が人口の8〜9割を占め、スピーカーから大音量のコーランの朗詠が鳴り響くイスラム世界だからです。
私たち観光客は敵視とも言える視線を浴びて到着します。
教会を見て回り、帰りのバスに乗る前にガイドさんが、「何も言わずにこちらへ入ってください」と何の変哲もないドアを指し示します。
入ると、イスラム世界とは全く違った、まばゆいばかりのクリスチャンギフトショップでした。
十字架がありキリストの聖画があり、きらびやかな宝石類がショーケースの中に散りばめられています。
私たち観光客は大喜びでおみやげを買ったのは言うまでもありません。
私は入店直後、一瞬考えました。
「あれ、この人たちはイスラム教信者で、キリスト教は反対の人たちではないのか?」
しかし、次の瞬間、
「ははーん。この店のオーナーは家族親族を養っていい生活をさせるために、きっと地元の顔役に話を通し、ちゃんと払うべきところにはお金を回し、表面上はイスラム教、経済はキリスト教で生きているのだな。絶妙な現実感覚だな」
と思い直し、とてもわかりやすいと思いました。
儲けたいという欲望があり、家族への愛があり、様々な矛盾した思いが絶妙なバランスでこういう形になって現れているのです。
この現実の只中で生きている私たちと同じ世界へ、イエス・キリストは飛び込み、全ての矛盾を十字架で受けて下さり、人類の罪の身代わりとなられたのです。
この方と共に生きると決心し、歩みを共にする人生は、どう考えても理不尽としか思えない現実の中で、自分の足を乗せる一歩々々の場所が示され、綱渡りのような人生であっても平安に進んでいくことが出来るのです。
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矛盾と理不尽の壁に遮られることが人生でしばしば起こります。
イエス・キリストもこの中に生きられ、そこで神の救いの道を示して下さったことを思い起こしましょう。
人生の逃れの道は必ず用意されています。
キリストと共に、その道を見出し、問題の只中を堂々と歩む今日として参りましょう。
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