今日のみ言葉(2011年6月20日)【No.92】
「わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛したように、あな
たがたも互に愛し合いなさい。」
(ヨハネ15:12)
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「私の妻は天使なんですよ」
と、70歳になろうとするMさんが話し出しました。今から30年ほど前、福島県の
片田舎でのことです。
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熱愛の末に結ばれたお二人は幸せな結婚生活を送られましたが、奥様の様子があ
る時から一変しました。今でいう認知症になられたのです。
当時は認知症に関する詳しい情報などありませんでしたから、Mさんは妻の行動
をいちいち直し、教え、時には叱りつけることもありました。
しかし、
「それはダメだよ」
「いい加減にしなさい」
「まだ分からないのか」
と、妻に立ち直ってもらいたいと思って言えばいうほど、「感情失禁」と呼ばれ
る激しい認知症の症状を招くことになりました。
泣き叫ぶ、にらみつける、障子を破る、練炭の穴に飴玉を詰める…。
「妻は私に嫌がらせか復讐をしているかのように思いました。」
と語るMさんは途方に暮れました。
ケアの行き届いた福祉施設や介護保険など無い時代、お子さんもいらっしゃらな
かったので、Mさんは一人で奥様の面倒を見なければならなかったのです。
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共にクリスチャンで、あんなに聡明な妻だったのに、なぜこのような…、と考え
ないわけではありませんでしたが、毎日の介護を送る中でMさんは一つの重大な
発見をします。
妻は愛なら受け取る。
ということでした。
教えや矯正やお説教には理屈抜きで猛烈に抵抗する妻が、
「ごめんね」
「あなたの好きな物を買ってきたよ」
「ありがとう」
という時だけは以前の穏やかな状態に戻っているというのです。
それはあたかも、愛だけを選び取っているかのようにMさんには見えました。
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「人間はどんなにわけが分からなくなったとしても、最後の最後まで、『自分は
愛されている』ということだけはわかるのですねえ。」
「だからねぇ、先生、私は妻には愛しか示せないんですよ。それ以外はみんな反
発されるんです。」
「私の中から愛しか引き出さない。私が愛100%の人間にならざるを得ない。先生、
だから私の妻は天使なんです。」
そう語るMさんの穏やかな表情を忘れることができません。
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愛し愛される人生こそ最高の人生です。
まず神の愛を受け取り、その愛をもって他者を愛する一日として参りましょう。
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