今日のみ言葉【No.1401】(2016年11月 1日) 040 「金持ちの青年」(2)
この青年はイエスに言った、「それはみな守ってきました。ほかに何が足りないのでしょう」。
(マタイ19:20)
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カウンセリングでは人生相談とは違い、カウンセラーが回答を与えることをしません。
カウンセリングを受ける人(クライエント)が自分で自分の答えを見つけ、自分で自分の問題に答を見出していくようにするのが基本です。
なぜなら、人は他人から与えられた答では動かないからです。
では、人は何によって動き、どうすればその人の行動が変容していくのでしょう?
人は自分が出した答で動きます。
自分で出した答が、自分自身を動かす最強のエンジンとなるのです。
カウンセラーとしては、「こうすればいい、ああすればいい」と、相手に答を与えることなど簡単なことです。
しかしあえてそうせず、クライエントが進む先に山があれば一緒に山に登り、谷に下れば一緒に谷に下り、そちらは行き止まりだと知りつつ一緒に無駄道をたどり、クライエントの姿を映し出し続けます。
そしてその先に、「ああ、こうすればいいんですね」とクライエントが自分の姿に気づいて、自分なりの答を出したら卒業です。
卒業とは、クライエントがカウンセラーを踏み台として飛び立ち、もはやカウンセラーの存在は忘れられ、捨て去られることです。
これが理想のカウンセリングの結果です。
イエス様がこの青年にされた関わり方は、まさしくカウンセリングです。
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永遠の生命を得たいと願ってきた青年に対し、イエス様は
「もし命に入りたいと思うなら、いましめを守りなさい」
(マタイ19:17)
と答えられました。
こういう場合、人はハッと気づいて、
「はい、思い当たることがあります。一生懸命精進します。」
とでも言って、そそくさと帰るものです。
しかしこの青年は次のように言って食い下がってきました。
「どのいましめですか」
(マタイ19:18)
彼は自信満々だったのです。
と同時に、それは自分の中に欠落している部分が見えないでいるということでもあります。
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青年は「何がまだ欠けているのだろうか?」とまじめに思っています。
そこでイエス様は、律法の基本であるモーセの十戒をあげ、その後半の対人関係に関わる戒めを彼に語られました。
「殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。父と母とを敬え」
(マタイ19:18-19)
出エジプト記第20章12節〜17節と比較してみましょう。
実は、ここで、イエス様があえて言っておられない戒めがあります。
それは何でしょうか。
なぜあえて十戒の一つだけを抜いて言われたのでしょうか。
そうです、その通りです。
その一つこそ、彼に足りない部分であり、彼が見えない点であり、それこそが彼の人生の鍵となる部分だったのです。
それは人から教えられたのでは直らないのです。
自分で気づき、発見し、自分でその点を直していこうとして初めて本当の変化が起きるからです。
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さて、イエス様があえて言わずに取っておいた戒めとは、
「あなたは隣人の家をむさぼってはならない」
(出エジプト記20:17)
という10番目の戒めです。
つまり、彼は実は貪欲であり、むさぼりの罪を犯していたのです。
そしてそれが当たり前になっていたので、表面上はそのことに気づいてはおらず、盲点となっていたのでしょう。
あるいは、もしかすると無意識ではそのことをとらえており、あえて目を背ける内的働きがあったのかもしれません。
もしそうでなければ、律法をよく学んでいた彼ですから、イエス様が言わなかった10番目の戒めに気づいて、
「先生、もうひとつあります。律法の教師なのにお忘れになったのですか?隣人の家をむさぼるな、という戒めが欠けています」
と、きっと指摘したことでしょう。
しかし、彼がそうせずに、
「それはみな守ってきました。ほかに何が足りないのでしょう」
(マタイ19:20)
と、スッと先に進んでいったということは、自分の本当の姿を見ないように、一瞬にして通り過ごした、と言うことができると思います。
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イエス様はあえてこのように言わないでいる時があります。
それは人間が自分で気づくためなのです。
この金持の青年は、自分にむさぼりの欲があることなど全く意識していなかったことでしょう。
それに気づいてもらうようにと、イエス様はあえて10番目の戒めを外して彼に語ったというところに、イエス様が名カウンセラーであることが伺えます。
何も言われないところに神の導きがあり、神との出会いがあることを覚えておきましょう。
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イエス・キリストのカウンセリングを受ける今日の日として参りましょう。
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